NOVEL
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2024-08-15 11:29:43
17話:未共有事項
学校に訪れるいつもの放課後。おれは、教室を抜けて図書室へと歩みを進めていた。今日は、特別拓真達と約束をしているとかそういう訳ではない。いや、元々約束なんてしたことは一度もないのだから、気にする必要な
2024-08-15 11:24:43
16話:夕空に浮かぶ嘲笑
「先輩、これ何に見えます?」 「なにこれ……。いやなにこれ、全然分かんないんだけど」 「えー、どう見たってウシさんじゃないですか」 誰かの雑談が、わたしの耳に入ってくる。だからといって特別どうとい
2024-08-15 11:21:40
15話:有限の時空は存在しない
橋下君と再開してから数日後の放課後。おれと拓真は、いつものように当たり前かのように図書室に足を運んでいた。ただ、ひとつだけ状況がいつもと違う。 「もう一月も終わるじゃないですか。もう一回くらい雪降
2024-08-15 11:19:56
14話:陽気な声は聞こえない
橋下君と出会ってから数日、特に何事もなく一日一日が過ぎていった。 「読むの飽きた……」 それを証明するかのように、おれと拓真は放課後の図書室にいる。用が無いのならさっさと帰ればいいものを、当た
2024-08-15 11:02:46
13話:不可思議に映ったもの
あれから暫くして、おれ達は高校生になった。 別にだからといって何かが変わったわけでもなく、言ってしまえば、それこそ小学校の時から状況は余り変わっていない。それはつまり、単純にそれなりに平和だったの
2024-08-15 10:39:04
12話:知られてはいけないこと
もし、おれが幽霊なんて見えないなんてことない普通の人間だったら、一体何が変わっていただろうか。そう思うことが少しずつ増えていったのは、ある種当然だと言っていいのだろう。 正直なところ、それらが見え
2024-08-15 10:05:07
11話:視えないものは何もなかった
事実は小説より奇なりとはよく言ったもので、いつだって現実は非現実的だ。あり得ないと思っていたことがあり得たり、そんなはずはないという固定概念に囚われて、目の前にある真実に気付かない場合だって往々にし
2024-08-14 23:57:06
10話:想い思うは他人事
辺りはとても静かだというのに、廊下にはおれの足裏が引っかかる音が耳に入る。しかし、とてもじゃないがそれを気にしていられる心持ではなかった。 とある一室を前に、ようやく足が立ち止まる。恐らくは数秒そ
2024-08-14 23:55:54
09話:クチナシが馨る
――時間は、刻一刻とひとつの事象へと向かっていく。 「か、神崎さんっ」 六月の上旬の話だ。つまりは、雅間のそれが起きるほんの数週間前のこと。 小さな声で、誰かが俺の名前を呼ぶ声がする。後ろを
2024-08-14 23:52:27
08話:クチナシの戯れ言
春休みが始まるよりも前の話。相谷と出会う前のことだったから、多分そのくらいの時だろう。俺はまた図書館に足を運んだ。少し時間が空いてしまったのには特に意味があるわけではない。そもそも週に二回くれば多い
2024-08-14 23:51:28
07話:クチナシは回視する
雅間という人物を認識したのは、確か1月も半ば。寒さもピークに達しているくらいの、そんな季節だった。 途中までの帰路は、いつものように宇栄原と一緒だった。別に一緒に帰る必要性なんて何処にもないのだが
2024-08-14 23:47:37
06話:クチナシに視えたもの
自分の世界というものは、いつだって突然終わりを告げる。日常なんていうありふれた存在は、いとも簡単に非日常になり得るものであるということを、一体どれだけの人間が気付いているのだろうか? なんて、偉そう
2024-08-14 23:45:01
05話:クチナシは喋らない
「書庫室、相谷さん達が入れるのはこっちですね」 案内人さんと一緒に向かったのは、僕の部屋がある側だ。橋下さんのいる126号室と、その隣にある僕の部屋に目もくれずに歩みを進める。どうやら、書庫室は一
2024-08-14 22:59:06
04話:記憶の壁
――瞼が重い。 「……ん」 一体いつの間に寝入ってしまったのか、ゆっくりと目を開けると目の前には浅い緑色が広がっていた。中途半端に眠ったせいか、頭に警告音が鳴り響いているかのように脈打つのを感
2024-08-14 22:58:09
03話:ヒミツが好きだと嘯いた
「……嘘つくなら、もう少しマシな嘘ついたら?」 掴まれた反動なのか、イヤホンが片方の耳から知らない間に外れていた。どうしてか何処か混沌としていた意識は、目の前にいる彼と風の音によって、少し、また少
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