NOVEL
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2024-08-13 00:12:33
12話:深淵を纏わない誰かの声
そろそろ日差しも落ちる準備を始める頃、雑踏の蔓延る市場の中で、オレともうひとりは特に何をするでもなく道を行き交う人らを眺めていた。 「お兄ちゃーん」 「んー?」 「暇だね」 「まあ……そうだね」
2024-08-13 00:11:18
11話:仕返しのウラ
足元に流れてきた枯れ葉が、僕の周りに数枚集まってくる。もうそんな時期になるかと思いながら、手の指が無機質な機械に触れた。そうすると聞こえてくるのは、僅に耳に入る呼び出し音。僕は、それをいかにして耳に
2024-08-13 00:10:04
10話:修復不可
ひと家族が住むにしては大きすぎる家。大きいだけで特に意味を持たないそれの中に、まるで当たり前のように住んでいる人間というのは、ある程度相場は決まっているというもの。だからというわけでもはないけど、世
2024-08-13 00:09:13
09話:真実の在処
ガチャリと玄関のドアが開く音が聞こえる。それはこの家の主が帰ってきたということの表れだった。 「あ、帰ってきたのかな……」 私がそう言葉を溢してすぐ、何かが落ちるような大きな音が家中に響く。突
2024-08-13 00:08:12
08話:蔓延る矛盾
「……ここかい? キミが来たという場所は」 「た、多分……」 「確かに、同じ場所とは思えない程に綺麗だね」 辺りを見回すと、さっきとは景観が全く違うのがよく分かる。綺麗に整備された庭が、そこにはち
2024-08-13 00:07:27
07話:消えない光
いつもと同じ量のそれは、ドサリと重い音を立てて腕にのし掛かる。 「じゃあ、また来てね」 「う、うん……ありがと」 五人分のご飯となれば、そうなるのも当たり前ではあるけれど。面倒かと聞かれれば、
2024-08-12 23:50:52
06話:犯人はいない
この時間、午後と呼ぶに相応しい時刻になると、僕の周りには環境音が蔓延り始める。 「……はい。……じゃあ、今日から一週間なので」 今日は、図書館にとっては休みの次の日に当たる為、平日に比べれば多
2024-08-08 23:35:20
05話:その言葉は真実か
「今日も静かだな……」 ひとりしかいないのに言葉を溢してしまうのは、寂しいからとかそういうことではなく、きっと誰もいないからこそなのだろう。その言葉は、誰にも認知されることなく消えてしまう。頬に優
2024-08-08 23:32:24
04話:文字に囲まれた者
薄暗い部屋は、どうしてか僕の落ち着かせる。その空間に包まれながら、何を考えるでもなくひとり静かに定位置である窓枠に座り、目を閉じていた。窓から射し込むいくつかの小さな光が、辛うじて僕のことを捉えてい
2024-08-08 23:30:01
03話:壊れた光
――辺りは、眩しい光に包まれている。 目を開けることが出来ないくらいに、オレの周りには光が蔓延っているのが分かる。あの人は、オレを元の場所に戻してくれると言った。光が収まるのを待って目を開けたその
2024-08-05 23:17:20
02話:静けさの狂気
「何ここ……」 振り向いた視線の先には、オレを呼んだであろう人物は誰一人としていない。それは、街の人も例外ではなかった。 さっきまでいたはずの子供も、貴族の噂をしていた大人達の姿も、何処にもいな
2024-08-05 17:47:48
01話:耳障りな音飛沫
ぺらり、と静かな店に響く新聞をめくる音は、誰の耳にも止まることなく地面に零れ落ちた。特になにを読んでいるという訳ではないが、今のオレは他にすることが無いのである。 「……暇だ」 そう、簡単にい
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