NOVEL
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2024-08-14 23:57:06
10話:想い思うは他人事
辺りはとても静かだというのに、廊下にはおれの足裏が引っかかる音が耳に入る。しかし、とてもじゃないがそれを気にしていられる心持ではなかった。 とある一室を前に、ようやく足が立ち止まる。恐らくは数秒そ
2024-08-14 23:55:54
09話:クチナシが馨る
――時間は、刻一刻とひとつの事象へと向かっていく。 「か、神崎さんっ」 六月の上旬の話だ。つまりは、雅間のそれが起きるほんの数週間前のこと。 小さな声で、誰かが俺の名前を呼ぶ声がする。後ろを
2024-08-14 23:52:27
08話:クチナシの戯れ言
春休みが始まるよりも前の話。相谷と出会う前のことだったから、多分そのくらいの時だろう。俺はまた図書館に足を運んだ。少し時間が空いてしまったのには特に意味があるわけではない。そもそも週に二回くれば多い
2024-08-14 23:51:28
07話:クチナシは回視する
雅間という人物を認識したのは、確か1月も半ば。寒さもピークに達しているくらいの、そんな季節だった。 途中までの帰路は、いつものように宇栄原と一緒だった。別に一緒に帰る必要性なんて何処にもないのだが
2024-08-14 23:47:37
06話:クチナシに視えたもの
自分の世界というものは、いつだって突然終わりを告げる。日常なんていうありふれた存在は、いとも簡単に非日常になり得るものであるということを、一体どれだけの人間が気付いているのだろうか? なんて、偉そう
2024-08-14 23:45:01
05話:クチナシは喋らない
「書庫室、相谷さん達が入れるのはこっちですね」 案内人さんと一緒に向かったのは、僕の部屋がある側だ。橋下さんのいる126号室と、その隣にある僕の部屋に目もくれずに歩みを進める。どうやら、書庫室は一
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